【専門家監修】化粧品に含まれる保湿成分の種類とは?効果を引き出すポイント
あなたが化粧品を選ぶときに求めるものは何でしょうか?
美白やシミ消しにはホワイトニング成分を含むもの、敏感肌の人は肌に優しいタイプのもの、たるみや毛穴のひらきが気になる人はエイジングケア商品など、肌の悩みに対応した化粧品が売られており、それらには保湿成分が含まれていることが多くあります。
夏の強い紫外線やエアコン、冬特有の空気の乾燥など、カサカサ肌につながる環境要因が季節を問わずあります。そのため、保湿有効成分はスキンケアの必須項目といっても良いでしょう。
この記事では、保湿成分の代表的な種類とその特徴、さらにその効果を引き出すスキンケアのポイントを紹介していきます。
ひと口に保湿化粧品といっても、配合成分やどのような仕組みで保湿するのかなどの違いがあります。保湿成分の種類と働き、その効果を理解することで自分の肌の求める成分に合うスキンケアを選ぶことができるようになるでしょう。
自分の肌のタイプを見極めて、あなたにぴったりのスキンケアを見つけましょう。
保湿成分が持つ働き
保湿成分の主な目的は皮膚の水分を補ったり、蒸散を防いだりして、肌のうるおいを保つことです。肌のうるおいが保たれることにより、正常なターンオーバーをコントロールして、滑らかな肌を保つ働きもあります。
また、肌の一番外側にある角質層は、保湿成分であるアミノ酸やセラミドなどで構成されており、この角質層に化粧水や保湿剤を塗って保湿成分や水分を届けることでうるおいのある肌を作ることができます。
出典:保湿とエモリエント | 日本化粧品工業連合会
参照:https://www.jcia.org/user/public/knowledge/glossary/moisturizing
化粧品に含まれる保湿成分の種類
保湿成分といっても、働きやどのように作用するのかによってさまざまな種類があります。
コラーゲンやヒアルロン酸、プラセンタなど聞いたことのある名称だけど、どのような働きをするのかよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
このセクションでは代表的な保湿成分とその効果を解説していきます。
セラミド
肌の表面にある角質層は何層もの角層細胞が重なってできています。その角層細胞同士のすき間を満たし、細胞をつないで水分を保っているのがセラミドです。
セラミドは、古い皮膚が剥がれ落ちて肌が生まれ変わる「ターンオーバー」の過程で生成されるもので、表皮の奥で作られて角質層に放出されます。
セラミドで満たされて水分が保たれている肌は、バリア機能が高められているため、外部刺激による肌荒れがしにくい状態です。また、肌表面のきめが整った状態なので、内側からの水分の蒸発が抑えられ、うるおいを維持しやすい肌になります。
ターンオーバーのサイクルは加齢とともに衰えていき、20代では約28日周期、50代では約45日周期となります。それに伴い、セラミドの生成量も減少していくためスキンケアやインナーケアで、セラミドを補うことが必要です。
出典:セラミドはなぜ肌の健康に重要か? | 公益財団法人 東京都医学総合研究所
参照:https://www.igakuken.or.jp/topics/2017/0301.html
スクワラン
スクワランは、ほ乳類や植物に含まれるスクワレンからできており、もともと人間の肌の中にも存在する天然由来の保湿成分です。
汗などの水分と混ざり合って角質層の表面を守る皮脂膜となり、乾燥や紫外線といった外部刺激から肌を守ります。水のようにさらっとして軽い感触で肌なじみがよく、毛穴を詰まらせないため、化粧品の保湿成分としてよく使われています。
肌がもともと持っているスクワランは、30代頃から減少していくため、意識して補給する必要があるでしょう。
出典:化粧品用語集 ライブラリー | 日本化粧品技術者会 SCCJ
参照:https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/858
ヒアルロン酸
ヒアルロン酸は、もともと人間の体内に存在する成分であり、目の硝子体や皮膚、関節などの水分を多くふくむ部位に備わっています。
保水力が非常に高く、1グラムで6リットルもの水を抱え込む力があり、体の各部位での水分保持の役割を担っています。
肌の保湿においてもその保水力を発揮し、ハリと弾力のある肌を保つのに欠かせない成分です。しかし、年齢を重ねることでヒアルロン酸の量が減少し、それに伴いハリやうるおいも失われ、乾燥や肌荒れなどの肌トラブルにもつながります。
ヒアルロン酸は、化粧品原料として安定性・安全性の高い成分であり、高い保湿力を持っているうえに肌なじみが良く、角質層を水分で満たしてしっとり感をキープしてくれます。
出典:化粧品用語集 ライブラリー | 日本化粧品技術者会 SCCJ
参照:https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/1332
コラーゲン
コラーゲンは、人の皮膚や骨、血管など人体を構成する必要不可欠なたんぱく質の一種で、人体のたんぱく質全体の約30%を占めています。
人間の皮膚は、外側から表皮、真皮と呼ばれる層で構成されており、コラーゲンは皮膚の深い層にある真皮に多く含まれています。また、表皮と真皮の間で養分の受け渡しをする基底膜という層にもコラーゲンは存在します。
この基底膜のコラーゲンが不足すると、肌のターンオーバーが正常に行われなくなり、本来ターンオーバーによって排出されるはずのメラニン色素が残り続けることになります。その結果、シミとなって定着してしまうこともあります。
コラーゲンは比較的簡単に食事から摂取できる成分です。身近なところでは、ゼラチンで作ったゼリーや軟骨、魚や鶏皮の煮凝りなどに豊富に含まれています。
出典:コラーゲン|厚生労働省
参照:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-011.html
グリセリン
グリセリンは、医薬品や化粧品などの用途に使われるアルコールの一種です。植物性グリセリンと合成グリセリンとがあり、主に化粧品に使われるのはヤシ油やパーム油を加水分解し精製した植物性グリセリンです。天然由来成分のため肌にやさしいのが特徴です。
無色透明の粘り気のある液体で非常に高い吸湿性を持つため、化粧品や軟膏などの保湿成分として配合されています。
肌の水分の蒸散を抑えるだけではなく、外部の水分を引き寄せる働きもあります。その吸湿性の高さから、空気中の水分を引き寄せるだけでなく肌の内部の水分まで奪って乾燥を引き起こしてしまうこともあるため、高濃度グリセリンを配合した化粧品を使うときには注意が必要です。
また、グリセリンには肌をやわらかくする作用も認められているため、マッサージクリームやクレンジングにも配合されていることがあります。
出典:化粧品用語集 ライブラリー | 日本化粧品技術者会 SCCJ
参照:https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/455
アミノ酸
表皮の細胞が表面に押し出され角質層になるとき、細胞内のたんぱく質が分解されてアミノ酸となります。このアミノ酸は角質層でうるおいを保つ役割を担っています。
しかし、角質層の重なりが乱れている状態だと表皮から水分が蒸発しやすく、外部刺激の影響を受けやすくなってしまいます。そのためうるおいを保つにはアミノ酸は欠かせません。
アミノ酸系の化粧品は低刺激性で肌や髪にやさしいのも特徴です。
出典:化粧品用語集 ライブラリー | 日本化粧品技術者会 SCCJ
参照:https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/53
ジプロピレングリコール
保湿成分であるプロピレングリコールをより低刺激にしたものがジプロピレングリコールです。安全性が高いため、敏感肌用のスキンケア商品によく配合されています。
グリセリンと同様に吸湿性能が高い成分ですが、グリセリンより粘性が低く、サラッとしたテクスチャーで、水やアルコールに非常に溶けやすいため、他の美容成分と組み合わせて化粧品の伸びや滑りなど、テクスチャー改善のために配合されることも多いと言われています。
出典:今はもう秋? もうすぐ寒くなってお肌の乾燥の季節です。すなわち保湿の季節です。|札幌市中央区の皮膚科 宮の森スキンケア診療室
参照:https://www.m-skin.com/archives/4863/
プラセンタ
プラセンタは、英語で「胎盤」を意味する言葉です。妊娠中にお母さんから赤ちゃんに栄養を送ったり、赤ちゃんが要らない老廃物をお母さんの血液に戻したりする働きをします。
胎盤には10種類以上のアミノ酸や多種のビタミン、ミネラル、酵素などの栄養成分や成長因子が豊富です。胎盤を持つ動物の多くは出産後、胎盤を食べてしまうのですが、これは出産で衰えた体力を栄養の豊富な胎盤で回復するという意図があるためだといわれています。
プラセンタはアミノ酸や成長因子が含まれており、コラーゲンの生成量を増やして肌にハリをもたらす効果や、角質の水分を保持して乾燥肌や乾燥によるシワの改善などの効果も期待できます。
ワセリン
ワセリンは石油を精製した保湿剤で、色は精製度に応じて薄い黄色から白色です。精製度が高い程余分な成分が除かれて、肌への刺激が少なくなります。
実はワセリン自体には保湿成分を含んでおらず、肌の表面に油膜を張り肌からの水分蒸発を防ぐことで乾燥を抑えたり、外部刺激から肌を守る役割を果たします。
入浴後や洗顔後のスキンケアで肌を保湿した後、仕上げにワセリンを塗ることで就寝中の肌を乾燥から守るほか、唇に塗って保湿ケアするなどが主な使用方法です。
糖類であるソルビトール
ソルビトールは、ブドウ糖やショ糖から得られる糖アルコールの一種であり、寒暖や湿度などの周囲の環境に影響を受けやすい肌の浸透圧保護剤として働きます。
ソルビトールを含む浸透圧保護剤は、さまざまな湿度と温度で起こりうる細胞内への水分の流入と放出を調節することで細胞を安定化させて周囲の環境に順応させます。
グリセリン同様に周囲の水分を集めて肌の水分量を保つ性質がありますが、質感はグリセリンよりべたついているのが特徴です。
出典:化粧品用語集 ライブラリー | 日本化粧品技術者会 SCCJ
参照:https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/981
化粧品に含まれる保湿成分の効果を引き出す7つのポイント
保湿成分の効果を引き出すには、化粧品に頼る以外の要因も必要になってきます。
保湿というと、肌に水分を入れるというようなイメージを持ちがちです。もちろん水分を入れることも大切ですが、肌が本来持っている力を最大限に活かせる状態に肌を整えることが大切です。
ここでは、肌環境を整えるために必要なポイントを紹介していきます。
- 生活習慣を見直す
- スキンケアは丁寧に行う
- 保湿成分は併用して取り入れる
- 顔だけでなくからだの保湿もあわせて行う
- 肌の状態にあわせて保湿の回数を増やす
- 敏感肌や乾燥肌の場合は洗顔後にすぐ使う
- 使用方法や使用量を守る
1:生活習慣を見直す
いくらスキンケアに手間やお金をかけても、不摂生をしていたり不規則な生活を送っていたりすると肌に悪影響を及ぼします。
食事と睡眠は人間の基本的な健康を支える基盤であり、規則正しい生活は体の健康だけでなく肌の健康にもつながります。バランスの良い食事と、適度で質の良い睡眠を心がけましょう。
2:スキンケアは丁寧に行う
スキンケアの方法をしっかりマスターして正しい方法で毎日丁寧に行いましょう。
基本的に水分の多いアイテムから使い、油分の多いものは最後に使いましょう。それぞれの工程でしっかり肌に保湿成分を浸透させるとより効果的に肌にうるおいを浸透させることができます。
休日や朝起きた時は、汚れていないからという理由で水で洗うだけという人もいますが、就寝中には皮脂や汗が分泌され、ホコリなどの細かい汚れなどがつきます。
水では皮脂は落とせないため、肌に付着したままになっていると、毛穴のつまりやざらつきなどの原因となってしまうでしょう。
3:保湿成分は併用して取り入れる
保湿成分は数種類を併用するとより保湿効果を発揮できます。
例えば、真皮で水分を保持するヒアルロン酸やコラーゲン、コラーゲンの生成量を増やすことができるプラセンタ、コラーゲンを構成するアミノ酸、水分の蒸発を抑えるワセリンなど、それぞれの成分を活かす組み合わせで保湿成分を取り入れると良いでしょう。
4:顔だけでなくからだの保湿もあわせて行う
体も乾燥するとバリア機能が低下します。また、乾燥が進むとかゆみや炎症、黒ずみなどを引き起こしやすくなります。乾燥した肌に衣服がこすれて赤くなったり、痒くなったりする人もいるでしょう。
風呂上がりの柔らかくなった肌は、水分が出ていきやすい状態です。入浴後はなるべく早く保湿ケアアイテムを塗るようにしましょう。特に乾燥が気になるかかとやひじなどには重ね塗りをしたり、ラップでパックするなど、スペシャルケアを施しましょう。
5:肌の状態にあわせて保湿の回数を増やす
保湿は基本的に1日2回、朝晩の洗顔後を目安に行います。ただし、乾燥する季節や、紫外線、空調などで乾燥しやすい時には、保湿の回数を増やしてみましょう。
朝晩以外は仕事や学校など外出していてスキンケアなんてできないという人もいるでしょう。外出先での保湿には、メイクの上からでも使えるミスト化粧水が活躍します。携帯できる大きさのスプレーボトルで、シュッと顔に振りかけるだけなので手軽に保湿ができるでしょう。
普通の化粧水と同様に、ヒアルロン酸やセラミド配合、敏感肌用などのラインアップも揃っています。
6:敏感肌や乾燥肌の場合は洗顔後にすぐ使う
朝晩の洗顔や入浴後に、なるべく早く保湿するようにします。
まず洗顔は36~38℃のぬるま湯で行いましょう。熱めのお湯で洗顔すると肌に必要な皮脂が溶けだしてしまうため、乾燥の原因となります。
洗顔後は、肌の毛穴が開いて水分が出ていきやすい状態になっています。出て行ってしまった水分を補うためには素早く化粧水をなじませて、保湿剤などの油分でフタをし、水分の蒸発を抑えましょう。
7:使用方法や使用量を守る
保湿化粧品は、たくさん使えば使うほど肌がうるおうということではありません。
肌が化粧水を吸収できる量は決まっており、その量を超えてしまって余った分は肌の表面に残って蒸発しますが、その時に肌内部の水分も一緒に奪ってしまいます。
逆に使用量が少ない場合には、化粧水を塗るときに肌を摩擦してしまうだけでなく塗布する量が足りず、乾燥や肌荒れにつながってしまうこともあります。
保湿アイテムのパッケージには、メーカーが定めた最適な使用方法と1回分の使用目安量が記載してあります。新しいアイテムを使うときには、用法用量を確認して使い始めましょう。
敏感肌や乾燥肌の場合に気を付けたい保湿化粧品の選び方
敏感肌や乾燥肌の人は、自分に合うアイテムを探すのが難しいでしょう。敏感肌におすすめという宣伝文句に惹かれて買ったのに使ってみたら肌がピリピリする、保湿成分がたくさん入っているのにすぐに乾燥するなど、失敗したスキンケアも多いのではないでしょうか。
そんな敏感肌・乾燥肌に悩む人に、保湿化粧品を選ぶときのポイントをご紹介します。
具体的な成分が把握できないものは選ばない
まずは商品のラベルに記載された成分表を見ましょう。写真に撮るなどして記録しておくと、過去に使った化粧品で肌に合わない商品に共通して入っている成分がわかりやすく、自分に合わない成分を見極めて避けることができます。
また、特に注意が必要なのは通販で購入する場合です。ほとんどの場合には購入ページや商品詳細の欄に成分が書かれていますが、まれに記載がないことがあります。
過去に肌トラブルを起こした成分が入っていることがあるためメーカーに問い合わせをして確認すると良いでしょう。
敏感肌向けの製品ブランドを選ぶ
季節の変わり目やストレス、生活の変化などで肌が乾燥して肌荒れする、かゆみや赤みがでてしまうといった悩みがあり、自分に合う化粧品を見つけるのが大変だという敏感肌の人もいるでしょう。
敏感肌向けブランドの製品はその名の通り、さまざまなタイプの敏感肌を研究し、低刺激性の肌にやさしい処方を採用したものです。原料や成分にも低刺激性のものを配合し、無香料、無着色などの工夫がされています。
敏感肌向けの商品は、開発段階で肌に刺激がないかを確認したり、敏感肌の人がテストしていることを表すパッチテスト済み、アレルギーテスト済みと表記しているものも多くあります。
いつも使っているスキンケア用品があわないと感じる人は敏感肌向けブランドのスキンケアを試してみても良いでしょう。
塗布後にべたつきがないものを選ぶ
化粧水や乳液をのせた後に、肌がべたべたするということがあります。べたついているからといって肌がうるおっているとは限りません。
スキンケア後時間が経ってからのべたつきは、乾燥や脂性肌によるものです。脂性肌は皮脂が過剰に分泌されてしまう肌質なため、油分の少ないさっぱりタイプのテクスチャーを選びましょう。
また、乾燥肌なのに化粧水塗布後にべたつく場合は、皮膚がうるおいを守ろうと皮脂を多く分泌していることによるべたつきが生じてしまっています。
化粧品と塗り薬との併用は主治医に相談する
スキンケアは肌のお手入れであるため、基本的には薬との併用は問題ありませんが、薬の効果を遮ってしまうこともあります。自己の判断で勝手に塗って思わぬ副作用が現れないとも限りません。
皮膚のトラブルが起こったときに塗り薬を使用する際には、セルフケアに頼らず、早めに医師や薬剤師に相談し、正しい量と塗布するタイミングで使いましょう。
化粧品に含まれる保湿成分を確認しておきましょう
保湿成分の種類と特徴を知ることで、より自分に合う化粧品を選べるため、安心して使うことができるようになります。自分の肌質や肌悩みに合わせて、必要な保湿成分を確認し、化粧品を選んでみてください。
また、保湿化粧品の効果を活かせるように、クレンジングや洗顔など、毎日のスキンケアや生活習慣も見直してみてはいかがでしょうか。
監修者
青山ラジュボークリニック
https://rajeubeau-clinic.com/wp/
院長 沼本 秀樹 先生(医学博士)
順天堂大学医学部卒業。医師としてアトピーや敏感肌などの悩みを持った患者と数多く向き合ってきた経験から自身で東京青山にて美容系ラジュボークリニックを開業。女性の肌の悩みを解決できる良質なサービスを提供し続けている。